金を出す男と金握りの女

結婚するにあたって、お互い確認したことがある。

実際隠していることもあるかもしれないが、夫は言っていた。

「貯金がない」

 

私個人の勝手な思い込みなのだが、男は貯金ができないものだと考えている。

もちろん男性を一括りにするつもりはない。色んな人がいるので、たっぷり持っている人がいることだって知っている。

ただ、一般的に貯金していない人が多いのではないかと思っている。

 

対して私は通帳の数字が減るのが嫌いな人間なので、少しずつでも貯めていた。

一人暮らしができる程度の稼ぎで、実家を出てからも続けた。車を持っていなかったが、保険も自分で支払っていた。だから同年代に比べて少ないくらいだが、着実に貯めていた。

いつ働けなくなるかわからないのだから、貯めるに越したことはない。

これはいわば自分への保険なのだ。

 

 

夫と私の年収は倍違う。

夫は自分を卑下して「これだけしか貰っていない」と言うが、私からしてみれば「そんなに稼いでいる」という感覚になる。

そもそも夫の年収は地方における平均はあり、現実的な数字である。そんなに気にするほどのものでもないのだ。私が働いていなかったとしても、ほどほどに楽しんで慎ましやかに普通に暮らしていける。

しかし一瞬「ん?」と思ったのは、私の倍稼いでいるのに、私の半分も貯金がないこと…一体、何に使っているんだ?

 

謎の一部は判明した。夫は一人暮らしだが家財がしっかりしていた。

結婚するにあたって新たに二人暮らし用の家財を買わなかった。十分すぎるほどのものを持っていた。持ち出しがないことは大変ありがたかったが、夫の過去が少しだけ気になってしまった。

それから、デートは私に支払いさせるのをかなり拒否する人だった。どうにか穴埋めしようと頑張ったが、ほぼ返せていないと思う。

 

ところで冒頭の貯金がないに戻るが、実際は全くないではなくて、かなり少ないだった。

結婚するから、いくらか目減りするだろうと覚悟していた私個人の資産があまり動かなかったのは意外だった。

というわけで、貯金がない男性でも、すごい浪費家出ない限り大丈夫だと思う。あくまで夫の場合なので、すべての人に当てはまるわけではないけれど。

夫は言う、「なんで貯金してこなかったんだろう」と。

 

 

結婚後の金銭管理は、夫の稼ぎで暮らし、私の稼ぎは貯金に回し、毎月二人で簡単な収支チェックをしている。どちらかが握っているということはない。

ちなみに婚前の貯金は切り離している。これは個人の資産なので、お互いノータッチだ。

夫は結局、それまで何に使っていたのか知らないが、結婚後の金銭管理もちゃんとしており、毎月の収支報告もばっちりだ。

一番安心しているのは、今のところ通帳の数字がちゃんと増えていることである。これが気になるのは未だに治らない…子供が大きくなったら耐えられるのか不安である。

引きこもり生活をしている私の気持ち

ここ数ヶ月、週に6日くらい朝から晩まで文字通り息子と二人きりだ。

新年度だし、春になったし、生活に慣れてきたし、自分の体調も体型もすっかり以前に戻っている。

息子と二人で毎日過ごすことは特別息が詰まっているわけではない。友達も少ないし、会わなくても死なないし、人間に飢えているわけではない。元々人付き合いしない方なので困っていない。

ただ、時々己の生産性のなさに辟易してくる。

変化したことといえば下っ腹の妊娠線くらいで…なんでこんなしわしわなんだ…

 

1年は育休を、せっかくの機会だからしっかり休ませてもらおう!とか産前は思っていました。なんだろう、ここ1ヶ月はやく復帰したくて仕方なくなってきた。

もちろん息子の成長を見ていたい!

体くねくねするようになったし、背ばいが上手だし、そのうち寝返りしそう。

離乳食もはじめた、おしゃべりも音がかなり増えてきた。

復帰もしたいがずっと息子を見ていたい…わがままだ、わがまますぎる。

自宅勤務ができる仕事を身に着けていなかったことを後悔している…まあそれはそれで息が詰まるかもしれないけれど、結局のところないものねだりだ。

理想としては会社に一緒に出社して同じ空間で仕事ができるという感じ。以前テレビでそんな会社を紹介していたのだが、まさに理想だった。いいなぁ。

 

私の生産性のなさをうんざり思っているのは私だけである。

夫は何も言わない。每日午前様で、一日中ゴロゴロしている妻子が寝てしまっている状況に何も言わない。

朝だけは一緒に食べているので会話があるが、私から話すのは息子の昨日の様子や、ニュースの話や、動画サービスで観た映画やドラマの話ばかりだ。

夫は何を考えているのだろう。時々「早く普通の生活に戻りたい」と言っている。

休日は私ではないと無理な状況でない限りずっと息子のお世話をしているから、その言葉が切実なものであることを私は知っている。

 

なにがどうしたいかさっぱりわからなくなってくるが、とりあえずちょっとだけ疲れた。

若い時間はあっという間に過ぎていく

私は10代をテレビゲームと創作活動に費やしていた。創作は一次創作で、キャラクターを考え、ストーリーを考え、文章にしていた。その作品の殆どはノートに書いていたが、黒歴史として全て処分済みだ。

自分パソコンを持つようになってから、作品はキーボードを打つようになったので、広大なネットの海に未だ存在している。

時々残したままのホームページを見ては恥ずかしさと懐かしさに身悶えする。

 

普通の青春とは一体、どういうものなのだろう。

少なくとも私の考える青春時代とは、愛だの恋だの男女の出会い、スポーツや部活動に明け暮れ汗を流し仲間と分かち合うものだと思っている。

私にそんな時代はなかった。

 

私は友だちが少ない。

今でも定期的に連絡を取り合う間柄はおらず、なんでも話せる親友と呼べる人もいない。

用事がなければ送らないし、あちらも同じだろう。間違いなく私より友だちが多いはずだから、年に一度私を思い出せば良い方ではないだろうか。

だからといってそれを悲しいと思ったことはない。

私は付き合いの悪い人間を自覚しており、覚えていてくれるだけありがたいからだ。

 

10代の私はゲームをするのが忙しい。加えて創作活動するのに忙しかった。

典型的なお家大好き・一人大好きっ子で、外に出てアクティビティを楽しむとか、オシャレをして友達とカフェに行くとか、男女混合でカラオケやボーリングに行くとか、した覚えが片手程度しかない。

友達に彼氏ができたことすら知らないくらい、自分の世界に没頭していた。

 

それが悪かったと思ってもいないし、失われた青春時代を取り戻したいとも思っていない。私にとってそれはそれで楽しかったからだ。

 

確かに世界が狭く、コミュニケーション能力に欠けており、思いやりの足りない人間であった。

人間関係の何たるやを学ぶ時期が遅すぎ、加えて身持ちの固さと頭の古さもあって、長く続いた恋愛はないに等しい。夫との付き合い=付き合いの長さ最長である。

まあまあ悲しい思いをして、なんでこんなにわかってもらえないのだろうと苦悩した。原因がどこにあるかもわからず、自分の悪い点もよく見えていなかった。

若さゆえと言えばそうであるけれど、それ以前に自己中心的な性格が災いしていたと思う。

普通の人はこれを10歳位若いうちに経験しているのだから、大人の思考をしているのは当然だ。

 

自分の世界は悪いものではない。その時にしか出来ないことも多さは、今になってよく分かる。

しかし外の世界、対人関係もきちんと学んでいかなければならなかったと今では思う。

失敗も、若いうちにある程度は経験しておいたほうが、大人になった時のダメージが少ないだろう。恨み言ばかり思って、内にこもるような子供っぽさを大人になってまで残すこともない。

 

だから今も時々連絡をくれる友人を大切にしなければなと思う。

二人の心地よい時間とはそれぞれに違う

スマートフォンに夢中になっているカップルが隣りに座っていた。

 家族と出先で食事をしようということで、近くにあったファミリーレストランに入った。息子はまだおすわりも出来ないが、ある程度の時間は静かにしていられるので、外食はあまりハードルが高くない。ましてやファミレスだ、平気で入れるところだ。

案内された席の隣りにいた二人客はメニューを見ていた。

注文が終わると、二人してスマホを取り出し画面とにらめっこをしていた。

その姿を見て、昔のことを思い出した。

 

私個人の主義として、二人きりの時はなるべくスマホを見ないようにしている。目の前の相手を放り出して一人の世界にこもるのが失礼だと思っているからだ。

二人ならば相手と会話をする時間であると思っている。もちろんする会話もないときだってあるけれど、他愛ない食事の話だとか、これからのことだとか、日常にあったことだとか、なんだかんだあるものだと思っている。

私自身会話をするのは苦手な方で得意ではないけれど、退屈ではない程度に過ごせていたと思う。

 

まあ、あくまで私の主義であって、相手には関係ない。

実母なんて平気でスマホを取り出してSNSやニュースを見ている。今やらなくてもいいんじゃないかと思うことをしている。自由人だ。

私はそれに慣れているし、実母だから特別なにも思わないけれど、そこまでして見たいものは何なのだろうと真剣に思う。友人が多い人だからこそ常々見なければ、追いつかないのだろうか。

友人が少ない私にはわからない世界の話だ。

 

ところで思い出した昔のことというのは、二人目に付き合った男のことだ。

少し年下だった。私のオタク趣味にも理解のある人で、相手もオタク趣味があった。相手を許容できるという意味で、居心地は悪くなかったと思っている。

けれども彼はスマホ中毒だった。何かあればスマホを見た。眼の前にいる私との会話や何もない時間より、スマホでゲームをするので忙しかった。

最終的に私は泣いた。お願いだから、二人でいる時にスマホばかりしないでくれ。ないがしろにされているようで気分が悪いと訴えた。

彼はとても素直な人なので、遠慮してくれるようになった。

けれどもその後、積み重なる気遣いのなさに私に事はどうでもいいと思っているのだろうと思えて仕方なく、別れた。

 

実際問題、二人いてどちらかが何かに夢中になっている時間に、残された人間は何をしていたら良かったのだろう。

偶然見たドラマで、二人それぞれ物思いに耽るシーンあり、ああなるほどな、と思った。

私は二人の時間というものを強要していたのだと気がついた。相手からしてみれば一緒にいるのだからそれで十分だったのだ。私がそれ以上、それ以外のものを望んでいたのだと。

私も一緒になってスマホに夢中になれて、ただ一緒にいる時間を過ごせたらまた違っていたのだろう…

 

とはいえ私はやはりこの主義を変えられない。

相手を置いて他のことに夢中になるのはできない。今でも夫が起きている時は、なるべくスマホをかまわないようにしている。

夫は何も思わないのかもしれないけれど、平日に時間がほとんどない分、休日における貴重な二人のコミュニケーションの場だと思っている。

家族になる前からそうして過ごせて、夫も二人の時間を大切にしてくれて、この人は私に合っているなと思えた。

もちろん万事そうではない。夫が一人で何かする時は私も別の他のことをするし、私が他のことをすれば夫も他のことを。ずっと何もせず会話だけ楽しみましょうとしているわけではない。

なんというか、阿吽の呼吸と絶妙な空気感だ。

 

スマホ依存は結構なものだ。私もスマホがないと不便だなと真剣に思っている。だからこそ利用する場面を間違わないようにしないといけない。

 

相性って大事なんだなと思った午後だった。

その一言を言う前に、ワンクッション置きましょう

しつこく言われると激しくムカつく。

具体的に言うと実母だ。

 

私の髪はロングで、息子が生まれる前から今もなおロングである。

切らない理由はたくさんある。

ショートが壊滅的に似合わない。おっさんになる。ボブは毛先が自由人なので髪の毛があっちこっちいく。いちいちヘアアイロンとか面倒くさい。赤ちゃんを抱える母親が現代において髪が濡れたままということはほぼないから、長かろうと問題ない。ひっぱられて痛い思いをするのはメガネでも同じだ。

 

息子からすれば、メガネ・ロングヘアーの私は掴みどころ満載のおもちゃでしかないだろう。

しかし眼鏡がないと本気で見えないし、ロングの弊害に関しては納得済みだ。

 

お風呂だって自分なりに工夫している。

最初に全てセッティングして、自分が脱いで、息子を脱がして風呂に連れ込んで、待機場所でいい子している息子を見ながらさっさと自分を洗って、息子を洗って、タオルに包んで息子を置いて、自分の水を軽く拭き取ったら下着だけ着て頭にタオルを巻いて化粧水つけて、息子の細かい所の水を拭いてローションなど手入れして、おむつ履かせて服着せてまた置いて、自分の頭を乾かせて、風呂場の軽い掃除(壁や床の水落とし)をして完了。

そうして息子を部屋に連れ戻す。

息子は本当にいい子なので一人で喋りながら待ってくれている。月齢が低いし、まだ勝手に動かないから余裕があるだけかもしれない。

だけど私は一人で出来ている。なんの問題もない。動き出したらまた考えればいいだけだ。

 

もう本当に、爆発しそうだ。会うたびに「髪切らないの」としつこいしつこい…すでに「しつこい、切らない」と言い返しているが、そのうち二度と来るなとか言ってしまいそうで怖い怖い。

 

切るのも切らないのも自由だ。

本人がそれでいいと言っているのだから、他人にどうこう言われたくない。自分の趣味を他人に押し付けるな。あなたにコントロールされるような年頃でもない。自立した大人です。

邪魔にならないように結んでいるし、ボサボサにならないように毛先の手入れや全体の手入れも合間を縫ってしている。

不潔だとかそういうことではなくて、単純に気に入らないのでしょうね。昔からそういう人でした。

ショートが好きだもんね…ロングにしてると暗いだの重いだのうるさい。あなたの主観に興味はない。

何もせずおろしてるんじゃなくて、アレンジしたり結んだりしています。その目は節穴か?

 

そういうことを実の娘だからしてしまうだけというのはわかっているけど、更年期にでもなれば本当の他人にしかねないから恐ろしい…母は一言余計だからそういうところが心配だ。

もうすでに更年期かもしれないけれど…

 

なんというか、やっぱり、里帰りしなくてよかったと心底思ってしまう自分がいる。

私も短気だから、滅多に会わないくらいが、本当にちょうどいい…